雑誌『Wasteland』

荒地の向こうにポエジーがある。
季刊の、新しい雑誌を僕たちは始めます。
タイトルは「ウェイストランド」。
これは、訳せば「荒地」、『サリンジャー全集』や『フィッツジェラルド全集』を出し続けてきた歴史を持つ「荒地出版」が出す、新しい時代へむけたフラッグ・マガジンの創刊です。
僕たちは今、再び「ウェイストランド」に立たされています。それはかつて経験したことのないような荒廃です。戦後50数年のツケは、政治、経済、文化だけではなく、僕たちの肉体、精神、そして想像力すらもスポイルしようとしています。
今までの価値観や、歴史的な時代感覚が、全て失効してしまった脱力感、方向感覚の喪失に誰もが襲われているのです。この状況をネガティブにとらえるのか、それともポジティブにとらえるのか、そこが問題です。
僕たちは、リスクを承知で、新しい旅を始めようと思います。確かに大文字の「文学」も「音楽」も「芸術」ももうないけれど、逆に表現やイマジネイションは、ますます人間がサバイバルしていくために不可欠のもの、つまり、リアルなものになっていると思うからです。例えナイーブであれ、ストリートでは自分の居場所を確認するように写真を撮り、また、たった一人で物語を綴りつづける者もいます。そうやって僕らはサバイバルしつづけなくてはならないのですから。
だから僕たちは「ウェイストランド」を文芸誌だとか、サブ・カルチャーマガジンだとか、あまり規定しないで始めます。
根幹には、音楽や、映画など文学外の視点から、物語や詩を再生させることはもちろん考えていますが、ワクにとらわれず、コトバにできること、コトバの力について様々な挑戦をしていきたいのです。
その時の僕たちの合言葉は「ポエジー」。例え稚拙に見えても、想像力を喚起するコトバであれば、詩でも、ノンフィクションでも、ノヴェルでも、コトバの断片でもよいのです。
現代の荒地から僕たちは新しい文学とコトバとイマジネイションの旅を始めます。
読者の皆さんにも、書店の皆さんにも御支援よろしく御願い致します。
「ウェイストランド」編集長/後藤繁雄+辻仁成 1998年 秋

1998年11月末「ウェイストランド(創刊号)」~2001年1月末「ウェイストランド(vol.8)」(2001年1月末/第一期終了)